劇団で働く

辻口実里
大阪市立工芸高等学校卒業→本学14年度卒業→15年度〜特定非営利活動法人 鳥の劇場勤務

―現在の職業・活動について―
 私は2015年の春から鳥取県にある「鳥の劇場」で働いています。「鳥の劇場」とは、その名の通り劇場の名前であり、また、劇団の名前でもあります。廃校になった幼稚園・小学校を作り変えた劇場で、年間を通して舞台作品を製作しています。このように専有の劇場を持つ劇団は全国的にも珍しいです。
 私が所属する制作部は、プレスリリースの作成やチケットの発券・予約管理などの事務的な仕事を行うだけでなく、受付での上演案内や、客席への誘導など、お客様と直接関わる機会が多い部署でもあります。この半年で、頻繁に来場される方に顔を覚えていただけるようになりました。
 毎年9月には「鳥の演劇祭」というフェスティバルを約3週間開催しています。この演劇祭では鳥の劇場の作品だけではなく、国内外からアーティストを招へいし、演劇、ダンス、サーカス、人形劇など様々なジャンルの作品の上演を行います。また地域の人たちが発表する場としても活用されており、今年は地域住民によるダンスや子供たちのお芝居が上演されました。演劇祭は世界と地域の交流の場であり、交流を通して、文化芸術が果たす役割や、地域から文化を発信する意義について考える機会になっています。
 来年は鳥の劇場設立10周年。これからどんな軌道で羽ばたいていくか、とても楽しみです。


―現在の仕事についたきっかけ―
 入学前からお芝居を観に行くことが好きだったので、大学でも舞台に関わる活動がしたいと思っていました。1年生で単位を多めに取得したので、2年生は授業を減らし、現代美術作家 やなぎみわさんの演劇プロジェクトに参加しました。このプロジェクトは、大学の「ULTRA FACTORY」という工房で履修できる授業「ULTRA PROJECT」の一つです。「ULTRA PROJECT」は、世界的にも活躍するアーティストの作品製作に、学生がスタッフとして参加することができます。
 「やなぎみわ 演劇プロジェクト」の公演は全国各地で行われ、私はほぼ全ての公演に同行しました。いまの職場である鳥の劇場も会場の一つでした。訪れたのがちょうど演劇祭の開催期間中だったので、私は、やなぎさんの公演が終わってからもボランティアスタッフとして一週間延長して滞在しました。そこで、鳥の劇場の活動や、そこで働いている人、作品、周辺の街並みや自然も含めて魅了され、入団することを視野に入れました。このときは、短期間のスタッフだったために出来る仕事が限られていました。そこで、4年生の夏、再び演劇祭のボランティアに行き、演劇祭が始まる前から撤収までの約1ヶ月滞在しました。そしてこのボランティア期間に入団が決まりました。
 実際に働き始めると、演劇祭を把握していないと出来ないことがたくさんあったので、学生のときにお客さんとしてではなく、スタッフとして関わっていて本当に良かったです。


―ASP学科で学んだこと―
 ASP学科ではアートプロデュースに限らず、学内外で幅広い活動を行うことができました。その中でも講師の中脇健児さんとの出会いは大きかったです。授業中に言われた「できない理由を探すのではなく、どうすれば出来るかを考えろ」という言葉は、困難な状況であっても工夫を凝らせばどうにかなるという希望を私に与えてくれました。働き始めたいま、特に時間に追われている時こそ自分に言い聞かせ、落ち着いて考えるようにしています。また、授業外で関西のあらゆる「まちづくり」の現場に同行させていただきました。特に伊丹の「オトラク」、富田の「とんだわっか」の現場では、地域の人たちが主体的に動き、どうやったら街を活性化できるか、どうしたら子供たちが地元に誇りを持ってくれるかを真剣に、ときにゆる〜く考えている姿が印象的でした。このような地域の活動を通して、ただ面白い企画を実行するだけでなく、企画を実行した結果、町やそこで働く人がどうなってほしいか、というビジョンを持つことが大切であることを学びました。
 現在、私は住み慣れた大阪を離れ、鳥取に移住しています。まだ、お芝居に関わって間もないのではっきりとしたビジョンは見えていませんが、外部から来たよそ者だからこそ見えてくる鳥取や鹿野町の面白さを、県内外の人に届けようと思っています。


―学生のみなさんへ―
 時間を大切にしてください。特に長期休暇は働き始めるとなかなか取れません。お金の心配もあると思いますが、どんどん遠出していろんな世界を見てみてください。そして、チャンスを逃さないでください。大学にも学科にもあらゆるチャンスが転がっています。私も在学中は、ロボットと一緒に作品鑑賞をしたり、京都大学の展示室の設計を企画するなど、入学前には想像もし得なかったような体験をたくさんしました。周りの人から声がかかったら、積極的に参加してみてください。人は思いがけないところで繋がっていきますよ。

 


(2015/11 更新)