大学院に進学する

河原功也
武蔵高等学校卒業→本学科14年度卒業→15年度〜京都市立芸術大学大学院 美術研究科 芸術学専攻 修士課程在籍

―現在の職業・活動について―
 卒業年次に取り組んだ論文・研究を通して、大学院進学を決めました。卒業論文では、古代から近代までの長い彫刻史の中から彫刻の特徴を整理し、山下拓也(名古屋在住/1985-)という若手作家の作品・作家論を組み立てました。彫刻史やその特徴について知っていくうちに、もっと見たり触ったり考えたりしたいと思いました。
 現在は、現代美術作家のマイク・ケリー(ロサンゼルス/1954-2012)の作品研究の準備をしています。特に、ぬいぐるみを使用した〈Half a Man〉という作品シリーズについて彫刻表現の視点から解釈しようと考えています。ケリーは、大量生産された真新しい商品を素材として作品に取り入れるのではなく、使い古されたぬいぐるみを用い、伝統的な手法である「手作業」を中心とした制作行為を行います。また、ぬいぐるみを商品としてではなく、“贈答品”として扱うことで、80年代後半のアメリカで流行していたアプロプリエイションの状況に対する一つの応答をしました。こういった素材や制作行為の特徴に注目しながら、ケリーの作品を観察、分析していきます。
 大学院は、今後、同世代の作家と何かの企画を実現させようとするときに、必要な力を得るための修行期間だと思っています。大学院には、学部のときにやりきれなかったことにチャレンジしていく人がけっこういて、そういう同年代の作家と接する機会があるのはとてもうれしいです。
 学部時代に出会った多くの作家、特に同世代の作家(といっても80年代生まれの方たちが多かったのですが)と過ごしてきた時間が自分の今の原動力のひとつです。めちゃくちゃ怒られたり、泣かされたり、驚かされたり、笑ったり、深夜に不思議なテンションになったり、そういうことをしながら、自分のなかで美術に対する態度を模索していました。まだまだ模索の途中ではありますが、作家という一人の人間が一つの作品をつくり出すエネルギーについて探っていきたいと考えています。どうしようもないくらい真っすぐに生きるということへのエネルギーについてです。


―ASP学科で学んだこと―
 ARTZONEでは、一人の作家または複数の作家と密な時間を過ごしながら展覧会をつくっていくことが多く、制作の現場や背景といった、作品からだけではわからない部分に接することができました。それによって、展覧会やイベントの企画・運営をする度に、こういった目には見えにくい事柄を大切に思うようになりました。
 ACOPでは、鑑賞者が心地よい空間で作品を見ることができるように、部屋の明るさや温度、イスの並べ方や、ゴミが落ちてないかなど、そういったちょっとしたことに目が向いていきました。また、物事に対して、なぜそうなのか? と気になるクセがついて、これまで気にしなかったようなことに目を向ける数が増えました。
 私は、実践の中で繰り広げられる対話や思考の繰り返し、そして、こういった些細なものへ目を向けることは、研究と実践的な場においてそれほど違いはないと思います。実践の場は、臨機応変でスリリングですし、研究の時間は、辛抱と孤独が待っています。自分がどのような考えをもって、何に向き合うのか。ASP学科には、そういったことを気づかせてくれる場がありました。先生も生徒もスリリングな人が多かったのもよかったのだと思います。

―ASP学科の在校生・これから入学されるみなさんへ―
 私は「花の咲かない植物はない」という言葉が好きです(引用:バイト先の植物屋の店長さんより)。植物は、置かれる環境の温度、湿度、風通し、日当りや各個体の成長状態、害虫との戦い・・・といったさまざまな影響関係によって生きています。複雑な影響によって絶好調のときもあれば、最悪のときもあるということです。自分と自分のいる場所、もしくは自分以外の誰かとの関係、そういった状況のなかで生きている人間と似ている部分も多いと思います。私は、この言葉をひとつの比喩として捉えています。この言葉は、簡単にはあきらめてはいけないことの大切さ、について教えてくれます。私はこれまでいろいろなことに対して何度もあきらめそうになってきましたが(あきらめたことももちろんあります…。)、その度、周りの人の助けがありました。まるでぐるぐると宙に浮いてどこに向かっているのかわからないような不安なときは必ずあります。でも、そのときに自分のことだけではなくて、周りの人や状況に目を向けることができたなら、それに真摯に向き合って、応えることが大切だと実感しました。枯れかけてしなびた枝を見たときに、簡単にあきらめてしまうのではなくて、そいつのまだ見ぬ花を見ようと向き合うことが大切なのだと思います。そして、枯れかけの枝の側なのであれば、必死に花を咲かせようと光や水に向かっていくことが必要です。厳密にはシダ植物、コケ植物、藻類といった種には花は咲きません。ですが、こいつらなりの花のかたちがきっとあります。そういったまだ見ぬ花のかたちをみつけられたのなら、それはきっと最高なことです。

 


(2015/8 更新)